気になる子どもってどんな子ども?
「気になる子ども」と聞くとどのような子どもを思い浮かべますか?
落ち着きのない子や乱暴な子、じっとしていられない子、理解するのが難しい子などの言葉が浮かびかがってくると思います。
そして、多くの保育者や保護者は「気になる子」=「障がいの有無」を連想するのではないでしょうか?
保育者や保護者は子どもの発達年齢を見て、「この年齢だからこのくらいはできるだろう」という自己体験や知識だけで子どもを見てしまいがちです。
それに対して、できない子どもや大人の指示に従えない子どもは、「どのように接してよいかわからない子ども」=「気になる子ども」という状況になると考えられます。
しかし、大事なのは発達障がいであるか否かではなくて、保育者がどのようにかかわれるか、ということではないでしょうか。
子どもを見るときに大切なのは、「障害があるかないかではなく、その子がどんなところに困っているか」に目を向けることだと考えます。
保育園や幼稚園は子どもにとって初めて出会う「社会」ですから、できないことやわからないことばかりです。
それでもその子を観察してみると、その子なりに「一緒に遊びたい」「貸してほしい」という気持ちを伝えようといろいろな方法で試みていることに気がつきます。
その方法が一方的だったり、わかりにくかったりするので、伝わらなくて困っているのではないかと思うのです。
一生懸命伝えようとしているのに、伝わらなくて困っている。
それならば、そのような「気になる子」が困らないように手立てを考えてあげることが重要です。
幼児期は神経の基礎が育つ時期ですから、手足をたくさん使って遊ぶことが、からだの落ち着きへとつながっていきます。
からだは本来「動きたい」という欲求をもっています。
これは運動感覚と結びついており、運動感覚が未熟だと、より強い刺激を求めて、動きが多くなってしまうのです。
からだが育つことで、心が育ち、そのうえ、かしこい頭が育っていきます。
幼児期に手足をたくさん使って遊ぶことで、思考力の土台が育っていくのです。
人は「からだ」という大きな土台があるからこそ、次に「こころ」という土台を重ねることができます。
そして、それらがあることによて「頭」がのせられるということは「鏡餅」にたとえることができます。
子どもはからだから学んでいくのに、大人は「ちゃんと話しなさい」「ひらがな覚えなさい」などと頭の方から働きかけがちです。
土台ができていないのに、大きなミカンを乗せようとしてもかえって不安定な状態になってしまうのではないでしょうか。
参考文献:「気になる子」のわらべうた
「気になる子」が満たされる遊びとは?
「気になる子」のこころとからだの発達を促していくには、昔から伝わる遊びが有効的です。
なかでもわらべうた遊びは「触れる、揺れる、動かす」など子どもの発達を促す要素がたくさんあります。
たとえば、「なべなばそこぬけ」では、運動感覚が育まれます。
運動感覚は自分のからだの位置関係を知覚します。
大人が思っているほど、実は子どもは、からだのすみずみまで意識も理解もしていません。
「そこがぬけたらかえりましょ」
で体をくるっとひっくり返すことで、ふだんは見えない背中を意識することができます。
意識し、動かすことで体を育てていくのです。
また、このわらべうたあそびでは、触れ合うことも大切です。
相手の手を取り触れ合うことは、青い手との安心・信頼関係を育んでいきます。
わらべうたのほかに、運動感覚、平衡感覚を満たす遊びとして、コマ回しや、竹ぽっくり、竹馬、けん玉、ゴム飛びなどの遊びがオススメです。
難しければ、自転車、三輪車、トランポリン、ブランコやシーソーなどの遊具でもいいですね。
わらべうたで育つ4つの感覚
発達の土台となる「触覚」「生命感覚」「運動感覚」「平衡感覚」という4つの感覚を育てることが、子どもの心と体をはぐぐむことにつながります。
これらの感覚はシュタイナー教育の感覚論をベースにしています。
「触覚」は、触れ合うことを通して安心、信頼を育みます。
「生命感覚」は、「食べる・寝る・遊ぶ」を中心とした生活リズムを作ることで、自律神経を整えます。
「運動感覚」は、自分のからだの大きさや動きを知覚することで、自由に動くからだへと導きます。
「平衡感覚」は、回転や前後上下左右の動きを知覚し、外部空間と自信との関係を知覚します。
そこで、これらを育むのにぴったりなのが、「わらべうた」なのです。
わらべうたは、優しく触れたり、くすぐりあったり、抱きしめたりすることが多いので、必然的にふれあいの時間が生まれます。
大好きな大人から触れられることで、「自分は自分でいいんだ」という気持ちが育まれ、大人との愛着関係も深まっていきます。
こうした「触覚」を基本に「生命感覚」や「運動感覚」「平衡感覚」を育む要素も、わらべうたにはふんだんに入っています。
わらべうたを通して、子どもたちの感覚が育ち、より生き生きとした心と体を育むことを願っています。
からだの動きが「気になる子」
「からだを育てる」わらべうたあそび
じっと座っれいられない、とになく歩きまわる、走りまわる、手が出る、足がでる・・・そうしたからだの動きが「「気になる子」の行動は「刺激が足りていないよ」という、からだの合図かもしれません。
電気をつける、お湯を入れる、ご飯を温める・・・何でも「指先ひとつ」でできてしまう生活だと、からだが成長するために必要な「運動感覚」「平衡感覚」への刺激が足らず、エネルギーがあり余ってしまいます。
そんな子どもたちとは、わらべうた遊びで体を一緒に動かしましょう。
特に、上下左右に揺れる動きやからだ全体を使う動きは効果的です。
保育カウンセラーでシュタイナー治療教育家の山下直樹さんが著者の「気になる子」のわらべうた
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この本には、体の動きが「気になる子」、コミュニケーションが「気になる子」、暮らしの中で「気になる子」とさまざまな子どもに視点を当てて子どもと一緒にできるわらべうたがまとめて書いてあります。
ここでは、その一部を紹介します。
◇好奇心旺盛で動き回る子には・・・
みんな着席して給食の配膳を待っているのに立ち歩いてしまったり、お昼寝の時に横になっていられず走り回ったり・・・。
子どもの動きが多いのは、平衡感覚の刺激が足りず、その不足分を満たそうとするためだと考えられています。
じっとしているだけでは「刺激が足りない」と脳が判断するため、走り回るなどして刺激を満たそうとするのです。
平衡感覚を育むあそびである「まわる」「転がる」「揺れる」などの動きで感覚を満たしていくことが必要です。
たとえば外出中に電車の座席に座っていられない子どもをひざの上に抱っこして、歌いながらその子の平衡感覚を刺激します。
平衡感覚が満たされると、それまで動き回っていた子も少しは落ち着くでしょう。
オススメわらべうた:おすわりやすやうまはとしとしなど。
童謡のおんまはみんなやバスごっこなどでも。
◇じっとしていられない子には・・・
子どもは信頼している大人に包まれて抱っこされると安心します。
そして、ゆっくり揺れることで平衡感覚が育ちます。
平衡感覚は前後上下や左右の動き、回転を感知する感覚ですが、それだけでなく落ち着きや集中力を保つことも関係しています。
オススメわらべうた:おふねがぎっちらこ・いもむしごろごろなど
◇落ち着きのない子には・・・
みんなで工作をしていても興味がない、部屋の隅で飛び跳ねている・・・。
こういった子どもは「飛び跳ねる」という平衡感覚の刺激を求めていると思われます。
ブランコや縄跳びなど、平衡感覚への刺激は快感があり、子どもが好きな遊びです。
このような場合「飛び跳ねちゃダメ!」と叱るのではなく、遊びの中で平衡感覚を育ててあげることがポイントです。
「なかなかほい」は上下に飛び跳ねる動きに合わせ、足を開閉することで平衡感覚が育ちます。
はじめは言葉と動きをあわせるのが難しいかもしれませんが、ゆっくりやってみましょう。
リズムに合わせて飛び跳ねることで、行動に落ち着きがみられるようになります。
おススメわらべうた:なかなかほい
◇乱暴な子には・・・・
両親がとても厳しく、怒鳴られたり、叩かれたりということを経験した子どもはヒトに触れられることを嫌がり乱暴をすることがあります。
それでも、遊ぶ機会を増やし関係を築いていくことが大切です。
手の平をやさしくさすりながら歌ってあげるとそれだけでも気持ちが満たされていきます。
マッサージもそうですが、触れうことは子どもに安心感を与え、「自分は自分でいいんだ」という気持ちになるものです。
「落ち着きがない子」にはあふれるエネルギーをうまく手足に伝えることができないために、誰かを叩いたり、蹴ったりということが起こります。
そこでおすすめなのは「おしくらまんじゅう」。
ここで大切なのは、子どもが床に足をつけて踏ん張り、背中を使ってしっかり大人の身体を押すこと。
グッと踏ん張って押し返すことを教えてあげましょう。
そうすることで、運動感覚も育ちます。
手足をたくさん使って遊ぶことで、からだ全体が育ってくると、叩くなどの乱暴な行動は減り、落ち着いてくるでしょう。
おススメわらべうた:せっくんぼ・こめやさん・あずきしょなど。
◇エネルギーがあり余っている子には・・・
子どもがいつも動き回りたいと感じるのは、運動感覚と平衡感覚の刺激が少ないから。
体を揺らしてあげたり、適度に動かしてあげることで、せわしなく走り回る子どもも、次第に落ち着いていきます。
おススメわらべうた:かごかごじゅろくもん・じごくごくらく・縄跳び遊び 揺らし遊びやなわとび遊び
◇姿勢の良くない子には・・・
座っているときはいすにもたれかかり、立っているときはからだが左右にふらふらと動いてしまう子どもがいます。
それは運動感覚の未成熟さが関係しています。
一定時間同じ姿勢を保ったり、思ったようにコントロールするには、運動感覚を育てる必要があります。
「おおかぜこかぜ」は手押し相撲です。
相手の動きに合わせて相手の手の平を押します。
強く押しすぎても、相手が手を引いた場合はつんのめってしまうので力の加減が重要です。
こうして自分と相手の距離をうまくはかり、力を加減すること、さらに押されて踏ん張りながら倒れないようにすることで運動感覚が育っていきます。
乳幼児や姿勢を保持する力が弱い子には「うまがはしれば」がよいでしょう。
子どもは揺れに合わせて自然に体重移動と姿勢保持をするので、平衡感覚が刺激され、正しく座るための筋肉や感覚が育ちます。
食事中などに姿勢が崩れがちな子は、ふだんからこんなわらべうたで楽しくあそぶとよいでしょう。
◇よくぶつかる子には・・
幼児期の子どもは大人のように体をすみずみまで認識していません。
手の指も一本筒把握しておらず、手という部位を漠然と把握しているだけです。
子どもは触れてもらいながら自分のからだを認識していきます。
そうすることで、自分のからだをコントロールする運動感覚が育っていくのです。
子ども時代の大事な課題は、頭の先からつま先まで、自分のからだを認識することです。
とくに幼児期は手足を思いっきり動かして遊ぶことが大事です。
おススメわらべうた:ここはてっくび・ふくすけさん
◇転びやすい子には・・
運動感覚の未成熟な子は、ほかの子にぶつかったり、転んだりする子とがあります。
「地に足のついていない子」におすすめなのは歩く、走る、手足を思いきり使うなどしてとにかく遊ぶことです。
「鬼決め歌」を歌った後はおもいっきり鬼ごっこを!
オススメわらべうた:鬼遊び歌
子どもをとりまく環境
子どもたちは「便利」な世の中で、手足を思いっきり動かして遊ぶ機会が失わてれいます。
大人たちの夜型生活に引きずられて生活リズムが乱れ、日本はいまや世界有数の「子どもの睡眠時間が短い国」となっています。
さらに刺激的で依存性も強いスマートフォンやタブレットを、ベビーカーに乗った乳幼児が四六時中触っている姿も、多く見かけるようになりました。
このような生活のなかでは、子どもの心や体がアンバランスに育っている可能性は少なからずあるでしょう。
子どもをとりまく環境は時代とともに変化しています。
しかし、子ども自身は昔から変わることはありません。
子どもがどのように育っていくかは、子どもをとりまく環境によって左右されます。
昔から伝わる伝承遊びは子どもの心を豊かにするものがたくさんあります。
それは子どもたち自らが作り出してきたものだから・・・といえるでしょう。
子どもの遊びの中で伝承されてきたわらべうた遊びですが、保育士や親が率先して子どもたちに伝えてあげたいですね。
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