「カラスがなくから か~えろ♪」
日が暮れて、友だちがひとりふたりと帰っていくなか、少し寂しさが感じられながら帰った記憶はありませんか?
「かくれんぼするもの このゆびとまれ~♪」と歌って友だちを集めて遊んだ・・そんな記憶はありますか。
子どもたちが毎日の生活やあそびの中で、自然に作り出してきたもの・・・
実は、それがわらべ歌の本来の遊びです。
また、親から子、祖父母から孫へのやさしい言葉かけやふれあいあそびといった、大人から子供へと歌い継がれてきたのもわらべ歌であるといわれています。
一方で、遊びの中で歌われていたわらべうたとは別に、季節によってうたわれてきた歌や幼稚園、小学校で歌ってきた歌、童謡もあります。
ここでは、子どものころから歌い継がれているわらべうたや童謡の違い、種類についてご紹介します。
童謡・唱歌・わらべうたの違いとは??
子どものころに、よくうたったうた遊び。
これらのうたにも種類が分かれていることをご存じですか?
童謡とわらべうた、そして唱歌。
この3つはよくひとくくりにされますが、実はそれぞれ全く違ったものなのです。
🔶童謡とは?
『赤い鳥』童謡運動(大正時代に鈴木三重吉が北原白秋の協力を得て児童文学の発展に力を尽くした)、及びそれ以降に大人が子どものために作曲した歌曲のこと。
🔶唱歌とは?
・文部省歌唱。戦前の小学校教科の一つで、学校音楽教育のために作られた歌のこと。
当時、著作権は文部省が所有し、作詞作曲者は明らかにされていませんでした。
🔶わらべうたとは?
子どもたちを取り巻く生活やあそびの中で、親や祖父母から伝承されてきたもの・子どもたちから自然に作り出されてきたものがわらべ歌です。
要約すると、この3つの決定的な違いは、童謡や唱歌は大人が子どもの教育のために、作詞作曲したものであるということ。
わらべうたは、作詞作曲が子ども自身であるということです。(一概にいえませんが)
わらべうたの世界
ここからは、わらべうたについて、さらに探っていきましょう。
わらべうたは日本だけでなく、世界中にあるものです。
しかし、わらべうたをもっていない民族もあります。
わらべ歌というのは、歴史の段階で現れたものです。
身近な例としては、アイヌがあげられます。アイヌにはわらべうたがありません。
それは、アイヌ民族には親子の共同体が離れる時期がなかったからです。
そういう社会段階があると、そこで子どもは自分たちだけになってしまうので、子どもはいろいろな遊びを考え出しました。
その一つが「わらべうた」です。
アイヌのように、民族がそれより以前の段階で止まってしまい、あとは社会の大きな流れに押しつぶされてしまった民族には、わらべうたはありません。
現在歌われている「わらべうた」と呼ばれるものの多くは、近代初期ころ(特に江戸時代)に生まれ、歌い継がれてきました。
戦乱もなく安定し、子どもたちが労働から解放され・・・子どもが子どもとしてその地位を確立したとき、初めて「わらべうた」が生まれたものではないかと思われます。
わらべうたの遊びと種類
わらべうたの特徴の一つは、遊びの豊富さです。
わらべうたの収集・採譜にあたった尾原昭夫 は、室内遊戯、戸外遊戯に分冊し、遊びの内容ごとにわらべうたを紹介しています。
【室内遊戯歌編】
遊ばせうた、顔遊び歌、生まれてすぐに赤ちゃんの顔や体に大人がやさしく触れながら遊ぶ歌が含まれています。
子どもは大人に触れられ、また、大人は子どもに触れることでお互いの愛情をはぐくんできた人間の営みを垣間見ることができます。
人と人とのかかわりの中で、道具も何もなくても体で十分遊べるという、忘れかけていた当たり前のことも改めて教えてくれます。
顔遊び歌・遊ばせ遊び歌 ・ひざのせ遊び ・しぐさ遊び ・触れ遊び ・手遊び歌・子守り歌・おはじきうた・風船つきうた・竹がえしうた・あやとりうた・手合わせうた・まりつきあそび・お手玉うた・絵かきうた・身振り遊び(いろいろな遊び方) |
【戸外遊戯歌】
まりやお手玉など、今の子どもの遊びとは疎遠になってしまったものもありますが、現在も人気の遊びは多くあります。
鬼遊び歌は、仲間集め、人あて鬼、かくれ鬼、つかまえ鬼、宿とりつかまえ鬼、演技・つかまえ鬼・目隠し鬼、草履かくし鬼、ごみかくし鬼、鬼きめなどに細分化されています。
遊びのはじめに仲間に呼びかけ、次に鬼きめをします。
そして、どのわらべうたにするか、子どもたちは決めていったのでしょう。
鬼遊びうた・鬼決め遊び歌・なわとびうた・輪あそびうた・列遊び歌・ブランコ遊び歌・馬乗りうた・片足跳びうた・くぐり遊び歌・押し合いうた・ゴム跳びうた・(いろいろな遊び方) |
現代ではあそびや行事の衰退とともに歌われなくなってしまった歌もありますが、わらべ歌を分類すると11種類に分けることができます。
1.年中行事の歌
正月・小正月。節句・七夕・お盆・秋祭りなどで歌われる歌。
日本のわらべうたは、日本の遊び文化を彩り、日本語の言葉の豊かさを伝えてくれると同時に、日本風土に応じた花鳥風月を主題としたものや四季の移ろいを感じさせてくれる動植物を主役とした遊びなど様々です。
今では行事の衰退ともにわらべ歌も少なくなり、歌われなくなってきている現状があります。
2.子守歌
眠らせ歌・遊ばせ歌・子守娘の境遇を歌った歌などがあり、なかでも子守り娘の子守歌は日本の特殊性だといわれています。
守子(もりこ・もりっこ)歌と呼ばれ、子守歌とは少し区別して扱われます。
3.鬼遊び歌
主に屋外で行われる、かくれんぼ・おいかけっこ・人当て・門くぐり・子もらい鬼などの遊びをするときに歌われます。
4.身体あそび歌
身体の一部または全身を使って遊ぶ歌をいいます。
赤ちゃんからもできるあそび歌で、触れ合い遊び、ひざのせ遊び、ゆすり遊びなどがあります。
参照:Allabout
5.お手合わせ歌
「せっせっせー」という言葉を合図に、お互いの両手をリズムよく歌に合わせます。
単純型・じゃんけん型・ジェスチャー型などがあります。
6.じゃんけん歌
歌を伴わないものもありますが、現在でも子どもたちの間でよく歌われ続けているわらべうたのひとつです。
7.なわとび歌
じゃんけん型・順番型・メドレー型などがあります。
ひとりで飛ぶものや何人かで飛ぶものとがあり、回数を数えるといった形での歌が多いです。
8.手まり歌
物語風の性格を持つものや数を中心とするもの、リズムを中心とするものがあり、長い歌詞のものが多いです。
9.お手玉・羽根つき歌
お手玉や羽根つきを行うときに歌いますが、現代ではあまり聞かれなくなりました。
そのほか、おはじき・石けり歌などもあります。
10.絵描き歌
数を使ったもの、文字を使ったもの、図形を使ったもの、それらを複合して展開するものとあり、完成図は人間や動物が多いです。
11.トナエ歌
遊び道具を必要とせず、唱えること自体が目的の歌。
しりとり歌、からかい歌などが主なものです。
わらべうたが11種類もあることに、ちょっと驚きましたが、見ていくとなるほど・・・どれも聞いたことがあったり、遊んだことのあるものばかり。
わらべうたは学校で習うわけでもなく、子どもの心に残ることが分かります。
遊びの自主性
このように、わらべうたを分類しましたがいくつかのわらべうたは一つの遊びに分類できないものもあります。
たとえば、「なかなかほい」はゴム跳びでも、小道具を使っても遊べますし、「さるのこしかけ」は、ひざのせ遊びの親子の1対1でも子どもたち同士の集団でも遊べます。
このように、ひとつの遊びがさまざまな遊びに変化していくのは、その時々の遊び手の発想が遊びとして受け入れられ、定着していったからでしょう。
わらべうたは、異年齢の子どもたちが一緒に遊べるのも魅力的です。
たとえば、「だるまさんがころんだ」。
この遊びでは、ちいさい子が多少動いたとしても、大目に見てもらえますし、逆に大きい子がズルをしたら仲間から諫められるでしょう。
場合によっては、その集団に会った遊びへのルールも調整されていくかもしれません。
遊びの種類と多様性、また自在性はわらべうたそのものの特徴ではありますが、同時に遊びの担い手である子どもの発想の豊かさ、柔軟さといった子どもの心性を反映しているといえます。
わらべ歌は民族の宝物
ハロウィンを知っていてもお盆を知らないという子どもが増えてきているそうです。
西洋のお盆=ハロウィンですが、ご先祖をお迎えする行事という点では日本のお盆と何ら変わりはありません。
現代の日本は“おもしろければいいじゃないか”という雰囲気でイベントを企画し、まるでファッションか何かのように、おしゃれに演出できることしか考えていないように思えます。
その行事の持つ意味合いとか歴史、文化などをおざなりにしているように思えてなりません。
それに、日本にも多くの行事があるにもかかわらず、それを知らない子どもたちが増えてきている現状も少し寂しいものがあります。
日本で育った日本の子どもたちが、日本のことをあまり知らないで西洋のことよく知っているというのも、皮肉なものです。
日本の年中行事には、正月・小正月・節分・ひな祭り・彼岸・端午の節句・七夕・盆・十五夜・十日夜など。
そのほかにも今は廃れてしまった行事もたくさんありますが、行事の数だけ“わらべうた”も歌われてきました。
今ではもう行事の衰退とともに歌われなくなった“わらべうた”も数多くありますが、古くから私たちの生活と密着していた”わらべうた“を子どもたちには少しでも多く残していきたいものです。
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