モンテッソーリ教育ってよく聞くけれど、具体的にはどんな教育??と思う人は多いのではないでしょうか。
米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏ら、世界的な著名人も学んだことで知られる幼児教育で、
医学博士であるマリア・モンテッソーリが発見した「自らを成長させていく自己教育の力」を根底に考えられた教育法です。
ここでは、世界中で実践されているモンテッソーリ教育の特徴、教具の紹介とモンテッソーリ幼稚園の流れについてご紹介します。
モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリメソッドとは、教育者であるマリア・モンテッソーリが「子どもの観察」から確立した教育法です。
歴史の中で生まれる教育上の問題を、モンテッソーリは子どもたちを身体的、精神的抑圧から解放し、消極的で依存した生き物から活発で、独立した個人へと変えようとしました。
モンテッソーリ教育の目的は、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことです。
その目的を達成するために、事実に基づいて独特の体系を持つ教具を開発するなどして教育法を確立していきました。
世界中で支持され、教育界に最も大きな影響を与えた教育法の一つとされています。
モンテッソーリ教育の大きな2つの特徴
1:美しい教材とグループ活動
モンテッソーリ教育は英才教育であるように思われがちですが、簡単にいうと
子どもの発達をとことん見つめ、子どもの自主性を信じ、伸ばす教育です。
そして大きな特徴として「環境と教具」があげられます。
子どもは生まれながらにして「やってみたい」という意欲と力をもっています。
その子どもの自発性を尊重し、子供の育ちに見合った環境を整えることが大切です。
大人の価値観で一方的に教え込もうとするのではなく、子どもの興味や発達段階を正しく理解し、子どもが触ってみたい、やってみたいと思う環境に大人自身がならなくてはなりません。
モンテッソーリは、感覚器官と運動器官と脳が完成する幼児期に経験すべきことを、教材を通して行えるようにしました。
それが、モンテッソーリ教育でつかわれる教具です。
もうひとつ、重要なモンテッソーリ教育の特徴は3つの異なる年齢の子どもたちを一つのグループにして指導することです。
子どもは個々によってそれぞれ速度の異なる発達をするもので、同年齢の子どもに一様に同じことを教えるよりも、それぞれの子どもの発達を観察しながら、個別の速度に従ってそれに相応しい刺激を与えるのが教師の役割である、というのがモンテッソーリの考え方です。
2:敏感期とお仕事
モンテッソーリ教育の内容に関わる重要な要素が、敏感期とお仕事です。
敏感期とは、「ある特定の機能」を成長させるため、特別に際立った感受性を持つ時期のことをさす生物学の用語です。
敏感期の働きによって生物は本能的にさまざまな刺激に触れ、環境から学習していきます。
生まれたばかりの生物がすぐにえさを探しに動けるのも、光や音、匂い、運動に対する敏感期があるからです。
モンテッソーリは、人間にも敏感期は備わっていると定義しました。
そこでモンテッソーリは、自分の成長に必要な事柄に対して敏感になり、環境の中から子ども自身が選び出して熱心に取り組みながらその対象を難なく獲得する時期に子どもを伸ばそうと考えたのです。
モンテッソーリは、0歳から6歳までの乳幼児期を発達段階の特徴から0歳から3歳までの前期と、3歳から6歳までの後期に分けて考えました。
そして、それぞれの発達段階にあらわれる敏感期を背景に、教育環境が用意されます。
子どもがある物事に対して感受性の強い時期に、それを納得できるまで活動する(=お仕事)ということです。
6つの発達と敏感期
モンテッソーリ教育を学んでいくと、しばしば「敏感期」という言葉が出てきます。
いつも決まった場所でないと気が済まない。
いつも同じ場所でないとイヤ・・・・。
この特別な感受性をもつ時期をモンテッソーリは
『秩序感に対する敏感期』と名付けました。
この敏感期は0~6歳の間に6つの発達段階を追って現れます。
1:言語の敏感期
期間:胎生7か月~3歳前後は話しことばの敏感期、3歳半~5歳半は文字ことばの敏感期
言語には音声を媒介とした「話しことば」と、文字を媒介とした「文字ことば」があります。
特に胎生7か月から3歳までの期間は、母国語の基礎を習得する重要な時期になります。
赤ちゃんの頃は言葉は話せませんが、聞く力が強いので、積極的に話しかけてあげるとよいでしょう。
2~3歳になると、それまでにためてきた言葉が話し言葉となって現れます。
2:秩序の敏感期
期間:6ヶ月~4歳半頃
習慣、場所、順番がいつもと同じであることに強いこだわりを見せる時期です。
赤ちゃんはは何も知らない状態で生まれてきます。
その状態で周りの状況をどう認識していくかというと、「秩序」として吸収していくのです。
なので、いつもと同じ習慣・場所・順番に安心感を覚え、少しでも違うと不快感を覚えます。
秩序の敏感期は、2歳ごろがピークでイヤイヤ期とちょうど被る時期です。
3:感覚の敏感期
時期:0歳~6歳
五感を刺激するものへの強い関心や興味を抱く時期です。
感覚とは五感と言われる視覚・聴覚・臭覚・触覚・味覚をいいます。
感覚の敏感期には2段階あります。
0歳から3歳は、無意識になんでも吸収していく時期で、淡い色の違いなど微妙な違いやニュアンスを感じ取ることができます。
3歳から6歳になると、それまでに吸収した膨大な感覚情報を整理・分類・秩序化していきます。
4:運動の敏感期
時期:0歳~3歳 運動機能の発達、3歳~6歳 洗練、調整された運動
運動とは、歩く・運ぶ・注ぐ・巻く・貼る・折る・縫う、などの動作や動きをいいます。
歩く、座るなどの体全体を動かす全身運動から、指先を使う微細運動まで、自分の意志で体を動かすことが楽しい時期です。
子どもは自立するうえで、必要な運動の筋力を習得すべく動き回ります。
赤ちゃんは、「ずりばい→たかばい→ハイハイ→つかまり立ち」の順序で歩行を習得します。
この過程が、必要な筋肉や体幹を鍛えるのに必要なのです。
最近はハイハイをあまりせず、つかまり立ちに移行する子も多いと言われています。
つまり、筋肉が十分に育つ前に次のステップに移行してしまっているということですです。
5:数の敏感期
時期:3歳~6歳
数に対しても幼児期に敏感期が現れます。
多い・少ないなどの量にこだわるのもこの時期です。
自分の年齢にこだわりを見せたり、お風呂の中で数を数え続けたり、数の敏感期の現れは生活の中で見出すことが出来ます。
6:文化・礼儀の敏感期
時期:4歳半~
動物、鉱物、宇宙、歴史、地理、芸術、挨拶、季節、行事など言語・数以外に出てくる世界のすべてに興味や関心を持ち、社会や世界とのかかわり方を知っていく時期です。
この時期の子どもは、多くの物事や人に接することにより、世の中の物事や人々の生活を整理し関係づけることができるようになります。
【0~3歳(前期)】7つの活動(お仕事)
0~3歳の時期は
「吸収する精神(無意識)」
と呼ばれ、人生の中でもっとも吸収力が強く、その後何年かけても達成できないようなことをいとも簡単に獲得し、人間社会に「適応」していく時期です。
モンテッソーリ教育では、「お仕事」と呼ばれる活動があります。
これは子どもの自己教育力を発揮させる環境として、7つの教育環境が用意されており、その活動のことをさしています。
1.粗大運動の活動
運動の獲得は、子どもの自立への第一歩です。
ここでいう「運動」とは、歩く、走る、ジャンプ、バランス感覚、階段の昇り降り等の全身を用いた大きな動きをさします。
ずり這いから歩行までの運動の獲得を援助します。
2.微細運動の活動
微細運動とは、手、指を使った運動をさします。
握る、落とす、たたくなどの動きを通して微細運動の獲得を促します。
腕や手を使うことから、教具を使った指先の運動を行うことで、手のひらでつかんでいたものが、指でつまめるようになります。
3.日常生活の練習
粗大運動と微細運動が複合的に合わさった活動です。
衣服の着脱(ボタンの付け外し)、手を洗う、歯磨き、など。
配膳、観葉植物の世話などの活動が含まれ、共同体の一員として日常の活動に参加させることにより、環境への適応を促していきます。
4.言語教育
ことばの獲得は、人間の本能です。
子どもは「話し言葉の敏感期」になると、自分の周囲で話されている言語を母国語として習得することを目指します。
しかし、ことばの量や質は環境に左右されます。
モンテッソーリ教育の『言語教育』では、子どものことばの発達段階に合わせての会話や、絵本の読み聞かせなどで豊かな語彙を養います。
5.感覚教育
子どもには、無意識に環境をまるごと吸収する精神が存在します。
吸収する精神によってため込んださまざまな感覚的な印象は、感覚教具に触れることによって整理されていきます。
五感を刺激する教具を使用することで、「きれい」という美的感覚や「危ない」という危険感覚を持つようになます。
「感覚の敏感期」を考慮し、発達段階や興味に応じた感覚教具に触れることにより、感覚の洗練を促します。
6.音楽
世界中のどの文化にも音楽があり、子どもは音を聴くと、自然に体を動かしたり、楽器を鳴らしたりして、表現することを楽しみます。
音楽を聴くこと、楽器を鳴らすこと、歌うこと、踊ることなどを促す環境を用意します。
7.美術
クレヨンや絵筆を握って絵を描いたり、粘土をこねたりして、指先の運動の精度を高めます。
目と手の協応動作の獲得を促すだけでなく、思いのまま自由に表現することを楽しむ活動です。
【3~6歳(後期)】5つの活動(お仕事)
3歳から6歳までの時期は、
「意識の芽生え」
の時期と呼び、前期に無意識に吸収したさまざまな事柄を、意識的に整理、秩序化していく時期です。
子どもの自己教育力を発揮させる環境として5つの教育活動が用意されています。
1.日常生活の練習
モンテッソーリ教育の基礎である課目です。
大人のすることを何でも真似したがる「模倣期」と「運動の敏感期」を利用して、自分の身体を思い通りに動かす能力を身につける場として日常生活があります。
たとえば、ひも通しによる縫う練習、まゆばさみによる箸を使う練習、金属磨きによる磨く練習など、実生活と関連する生活練習です。
日常生活の練習によって、子どもは秩序立った体の動かし方を身につけるとともに、自立心や独立心を育みます。
ひも通し・棒通し 1.2.3歳
2.感覚教育
「感覚の敏感期」を利用し、ものの考え方を身につけさせる教育法です。
感覚教具は、「対にする」「段階づける」「仲間分けする」という3つの操作法が組み込まれています。
教具を操作することで、様々な情報を習得し、感覚を洗練させ、「ものを観察する能力」や「ものを考える方法」を身につけることができます。
後の「言語教育」「算数教育」「文化教育」の礎となります。
3.言語教育
話す、書く、読むの作業を通じて言語発達を豊かにする教育法です。
絵と文字が書かれた絵カードや、文字を並べ替えて言葉や文章を作る文字カードを使います。
「言語の敏感期」に言葉の発達段階に合わせて、語彙や文法、文章構成を学びます。
4.算数教育
「数の敏感期」を利用し数量を具体的に表し、手で扱えるようにします。
感覚から抽象へ、具体から抽象へと導きます。
数の概念の基礎、十進法、簡単な計算を学びます。
代表的な教具は算数棒やビーズなどです。
抽象的、論理的な力が身につきます。
エデュケーション・教具 2,3歳
5.文化教育
言葉と数以外の子どもの興味を対象とした幅広い分野で、身近なものに触れながら、歴史や地理、生物、音楽について学びます。
代表的な教具は世界地図パズルや時計などです。
モンテッソーリ幼稚園の活動内容
モンテッソーリ教育は主に幼児教育として知られていますが、小中学校とあり、一貫した教育プログラムで構成されています。
モンテッソーリ教育を実践している幼稚園の日常はどんなものなの?と気になるあなた。
そこではなんでもチャレンジして、できるまでじっくり取り組む子どものいきいいきした表情がたくさんあります。
英才教育であるように思われがちですが、モンテッソーリ教育は子どもの発達をとことん見つめ、子どもの自主性を信じ、伸ばす教育です。
ここでは、モンテッソーリの幼稚園の一日をご紹介します。
幼稚園の主な流れ
登園後、自分で着替え、自由に活動し始めます。
自由活動ではモンテッソーリの教具を中心に使います。(モンテッソーリ教育ではあそびの道具を「教具」と呼びます)。
教具は、「日常」「感覚」「言語」「数」「文化」の種類があります。
文字のカードを組み合わせるもの、切ったり貼ったり縫ったり、色水を注いだりするものなどさまざま。
好きなものを選び、満足のいくまでじっくり遊びます。
子どもが成長するには、自信をつけることが大切です。
一人でできることが増えると自信がつく。
教具はそのための手段です。
モンテッソーリ教育というと小学校受験のイメージがありますが、もしモンテッソーリが受験なんて聞いたら悲しがるでしょう。
モンテッソーリ教育では、子ども一人ひとりの人格として尊重すること、そしてそのうえで子どもが自立して活動しやすいように、周囲環境を整えることに重視しています。
自由活動の後は、外遊び開始。
子どもは大きい遊具や小さい遊具など、自分で選び遊びます。
お昼になると、こどもたちはお昼の準備を始めます。
当番の子が、お茶くみや配膳を行います。
最初は先生から「時計の針がここに来たらお集りよ」と言われますが、慣れると自主的に自分で時間の管理ができるようになります。
お昼の後はまた外遊び。
帰りの準備はの後は、クラス別の活動へと変わります。
クラス編成
モンテッソーリ教育は異年齢の縦割りのクラスで編成されています。
できないことは先生はもちろん、おねえさん、おにいさんが手伝ってくれます。
年少は幼稚園のルールを年長の子から学びます。
園では何をしてもいいけれど、使ったものは元の場所に戻し、人のものは横取りしてはいけないこと。
遊びの時間ははじめも終わりも自分で決められるけれど、お弁当や帰りの時間は守らなければならないこと。
自由が基本にある時は、相手の自由も尊重すること。
そうした園のルールだけではなく、子どもの間で自然にできたルールもあります。
自主活動の準備も片付けも全部自分で
すべての教具は、子どもが手に取りやすいようにいつも決まった場所に整然として収められています。
使ったら元の場所に戻すのがルール。
机を汚してしまったら、ぞうきんを絞って拭いたり、手が汚れたら洗ったりと自主的に動きます。
>>0~3歳ごろまでにやっておきたいこと~モンテッソーリ教育
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