シュタイナー教育では、従来の学校教育が行ってきた形式を根底からくつがえす、いくつもの特徴を持っています。
カトリックやプロテスタントの学校、あるいは公立学校として存在するのに対し、唯一どの宗派の学校とも立場を異にし、世界でも有名なオルタナティブ教育の一つとして知られています。
日本では、「シュタイナー学校」の名前が知られていますが、アメリカやヨーロッパでは「ヴァルドルフスクール」と呼ばれることが主流となっています。
ここでは、シュタイナー学校の特徴とそこで学んだ子どもたちの育ちについてご紹介します。
シュタイナー学校 7つの特徴
シュタイナー教育は、一般的な学校の授業とは違った特徴が主に7つあります。
では、その7つの特徴とは一体なんでしょう??
さっそく、ひとつずつ見ていきましょう。
1:授業内容
シュタイナー教育では、子どもの発達は単に<頭>を使った知的な成長に留めるものではない、という考え方をしています。
子どもが<心>で感じるものを引きだし、また<手>を動かして物を作りだす能力を引き出すことを大変強調しています。
そのため、シュタイナー学校では、従来の学校がもっぱら指導してきた、「読み」「書き」「計算」だけではなく、音楽や絵画などの<心>で感じる授業、金属や木材、布などを材料にして<手>を動かして、物を生み出す能力を育てる「手仕事の授業」を行っています。
そして、<頭>と<心>と<手>による総合的な学習のために、演劇やオイリュトミー(身体表現運動)などの授業にも多くの時間を割いて指導しています。
【主な授業内容】
- お話の時間
- エポックの授業
- オイリュトミーの授業
- 二つの外国語の授業
- 生演奏の音楽
- 芸術的な環境の育成
- 水彩とフォルメンの系統だった授業
*オイリュトミーとはヴァルドルフ・シュタイナーが考案した身体表現運動のことです。
オイリュトミーとはギリシャ語で「美しい調和のあるリズム」という意味であり、音楽や言葉のリズムと響き、語られた言葉そのものを動きとして身体で表現します。
運動メソッドとして、リトミックやあらゆるダンス、パントマイム等と区別するために「目に見える言葉の芸術」「目に見える音楽の芸術」と呼ばれています。
2:エポック授業
シュタイナー学校ではエポック授業と呼ばれるものがあります。
国語・算数・理科・社会などの教科内容を、時間割にして毎日小刻みに学ぶのではなく、1つの科目を一定期間(たとえば4週間)集中して学習する「エポック授業」という時間割の取り方をしています。
エポック授業では、身体を使うリズム活動や感覚を大事にする体験的な遊びと理論的な学びを融合させた、総合的な学びの時間です。
次々と授業が変わるのと違い、子どもたちは一定の期間同じ科目を学ぶため、その教科に集中して取り組むことができます。
そのため、昨日わからなかったことでも、次の日にはわかるようになったりします。
3:12年制の一貫教育
シュタイナー教育を行う学校は、12年制の一貫教育です。
小、中、高校といった区切りはほとんどなく、1年生から12年生までの12年間を同じ校舎で学びます。
そして、小学1年生(6才)から中学2年生(14才)までの8年間は同じクラスの仲間と学びます。
同じクラスの仲間、そして一人の教師が一貫して担任として8年間指導します。
4:教科書を使わない授業
シュタイナー教育では、教科書を使いません。
既存の教科書は使わず、エポックノートというノートに授業で学んだことを絵や文字で書きこんでいき、それが生徒自身の教科書になります。
毎日先生が黒板に書くことが、そのまま子どもたちの教科書となるのです。
5:メディアに触れない
シュタイナー教育の理念では、特に低学年においては、テレビなどのメディアを視聴することは推奨されていません。
シュタイナーは五感以外にも、思考感覚や生命感覚を含めた十二感覚についても述べています。
テレビは相手からの一方的な表現のみであり、目の前にある絵に縛られ、自分の想像力を使った絵が描けなくなり、内面性が育ちません。
視力や思考力を育てるためにもメディアを視聴しません。
*メディアとは、テレビ、ラジオ、YouTube、スマートフォンなど情報伝達を媒介するものをさします。
子どもにとって、必要のない情報を与えることは、子どもの成長を妨げることに繋がります。
6:テストがない
シュタイナー教育では、到達度を一律に決めることはしません。
優劣をつけるテストを行なわず、レポート提出や担任との受け答えで子どもの学びの成長を見ていきます。
知識だけではなく、全人としての成長を追求しているため、子ども一人ひとりの成長に寄り添います。
そのため、一定の基準で評価したり、他社と競わせたりすることは無意味だとされています。
学びの評価だけをする通知表的なものはありませんが、教科ごとに先生から見たその子の人物描写や勉強面の観察などが記載されるため、子どもの学びの様子を知ることができます。
7:独自の教材
シュタイナー教育では、他校では使っていない教材が使われています。
鉛筆は使わずに、蜜蝋クレヨン(ブロッククレヨンとスティッククレヨン)と色鉛筆でノートをとります。
低学年は蜜ろうクレヨン、学年が上がると色鉛筆、万年筆を使うようになります。
絵を描くことも多いため、色彩豊かなノートになります。
子どもの育ちから見る シュタイナー教育のメリットとデメリット?
シュタイナー教育だけでなく、教育について調べていくと、必ずといっていいほど出てくる言葉が「メリットとデメリット」。
日本語で言うと「利益と不利益」のことですね。
この言葉は、果たして子どもの教育に当てはまるのでしょうか??
「メリットとデメリット」とは、つまりは親が判断するものであり、子ども自身はこれらを「メリットとデメリット」とは判断しません。
そのことを念頭に置いてみていきましょう。
シュタイナー教育のメリットで検索してみると、次のような項目が多く出てきます。
【メリット】
・自由を尊重することで決断力や判断力が身につく
・感受性が豊かに育つ
・論理的思考が身につきやすい
・学力を重視しない個性を尊重した教育ができるので子どもの才能を開花しやすい
・一貫した教育方針の中で保護者が教育にかかわりやすい
・手先が器用になりやすい
・表現力、創造力豊かな人材に育つ
(*必ずこのような人間に育つとは限らない)
一方デメリットでは次のような項目があります。
【デメリット】
・テレビなどを制限されることから日常生活で子どもが制約を受けてしまう(?)
・シュタイナー教育の認定校でなければ卒業資格を得られない
・学力を重視していないので学力を伸ばしにくい(?)
・学ぶペースが合わなかったり大学進学に不利になったりする可能性がある
・子どもの育児用具を手作りする(?)
・オーガニック中心の食生活にする(?)
・社会へ出たときの周囲とのギャップ
・低学年のうちは特定の身体に負担をかけないようにサッカーや野球を推奨しないため、スポーツに関しては少し物足りなく感じる(?)
これらのメリットとデメリットは、これから子どもの教育を考えている親にとってはありがたい情報でもあります。
しかし、これらの情報は、正しくもあり、間違いでもあります。
多くの情報が飛び交う今のIT 社会では、いかに正しい情報を集めるか、自分に必要な情報とは何か、を見極める力が必要になります。
実際に学校へ訪問したり、体験授業を受けるなど、行動することが一番大切です。
教育とは、そもそも学校という場所だけで行われるのではなく、学校と家庭との連携があってこそのものです。
学校の方針と自分の考え方が合っているか、合っていないか・・・。
まずはその視点から、これらの情報を見てほしいと思います。
シュタイナー学校は教師と親が共同で責任を担う組織、共同体という理念の下で運営されています。
ヴァルドルフ・シュタイナー学校は、自治(すなわち国によって管理されない)組織です。
教師と親が学校を方向づけ、それにふさわしい組織を生み出すために活動しています。(このことから「自由への教育」といわれています。)
こういった活動の下で、子どもは周囲の大人たちのことをよく見て、模倣していきます。
子どもたちへの愛が感じられる学校環境。
こういった大人たちの姿をみて育つ子どもからは、「自分を大切にする、子どもらしい子ども」の姿がみられます。
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