わらべうたという日本文化
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最終更新日:2019/09/11
コダーイの音楽教育
子どものあそび、そのなかには、遠い祖先の信仰や習慣がふくまれています。
特に、わらべ唄のなかには、そうした信仰や習慣をあそびにしてきたようなところが、随所に顔をのぞかせています。
では、わらべうたはどのようにして子どもたちにあそび継がれてきたのでしょうか?
わらべうたのはじまり
日本人の遊び、それは神々をよろこばせる神楽であり、舞踏などでした。
それらの祭りに、子どもは選ばれて稚児として奉仕しました。その遊びを、稚児は子どもの集団に広げていったものがふくまれていったのです。
神への祈り
夕焼けの空を、山へ帰っていくからすに、子どもたちは「からす勘三郎」と呼びかける。
多くのからすのわらべうたとからすに対する風俗を探っていくと、「からす勧請」(勧請とは、仏神の加護を祈り願うこと)といって、
からすを呼び止め、えさなどを与えていたことがわかってきます。
からすは、山の神の使いであり、春になると山の神は水田へ降りてきて他の神となる。
その神の使いのからすに、食物をふるった名残が、「からす勘三郎」と呼びかけることばのなかに残っていったのです。
わらべうたが残る理由
わらべうたのうたわれる時間の多くは、夕暮れに集中しているといっていいほど、子どもたちは夕暮れに集団をつくって遊ぶことが多くあります。
労働から疲れて帰る大人の心を、子どもたちの合唱がなごやかにしてくれます。
それは、かつておとなも遊びうたったわらべうたであったことにもよるでしょう。
また、大人たちの捨ててしまった流行歌を、子どもたちはもらい受けてあそび歌にしている例があります。
大正時代に『バラの唄』という歌が女学生間に歌われました。そして、多くの替え歌ができました(日本歌謡集)が、まもなく大人の世界から消えてしまいました。
小さき鉢の花バラ
あなたの愛の露うけて
うす紅の花の色
きのう初めて笑ってよ
恋の歌でありますが、この原歌は忘れてもリズムは今も、子どもたちの世界に伝承されています。
手まり唄やゴム飛びをするときの唄にしています。
おはぎがお嫁に行くときは
あんこときな粉でお化粧して
丸いお盆にのせられて
あすはいよいよ下関
子どもの芸術
子どもの遊びは、日本の四季おりおりの変化に伴って、その遊びを選んできました。
同じ子取り遊びでも、桜の季節は「花いちもんめ」。
夏になると、夕涼みに子取り遊びをしますが、そのときは所帯じみた歌詞で、「たんす長持、どなたが欲しい」(京都)という嫁迎えの遊びうたになったりします。
また、冬になって、すずめが家の屋根にかえってくると、「すんずめ雀ほしいよ」(秋田)の子取り遊びをします。
子どものなかには、詩があり音楽があり、舞踏も劇的な遊戯もいっぱいにつまっています。
それは、それ自身で独立した芸術であって、大人のつくった芸術ではありません。
むしろ、大人が時流に迎合して放棄したなかから、すぐれた部分のみを利用し、アレンジし、ちいさな芸術に仕上げたものが多くあります。
唄で祈りを
子どもたちは、音楽と詩で、祖霊を迎えたり送ったりもしました。
その祖霊をなぐさめるために、「百八燈」(彼岸)「盆ならさん」(盆)の小町踊りを町にくりひろげました。
また、子どもたちは、町内繁盛のため、豊作の予祝として初午祭りも引き受けてきました。
町内の和を守るために、地蔵盆を大人に要求してきました。また、亥子祭りもしてきました。
老人の信心を深めるために、お十夜へいくことを要求とし、その土産を待つこともしてきました。
雪に豊年、豊漁を願って、雪にも歌いかけてきた子どもたちは、あそびを通して大人の平安を祈っていたのです。
大人も、子どもの健全な成長を願って、ひな祭りや端午の節句、七五三の祈りにと、心をそそいできました。
今は、その形だけが残ってしまい、その心を忘れてしまっているようです。
日本の子どもと大人が、どのように心を通わせあったかを、わらべうたを通してかいま見ることができればと思います。
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