ニキーチン教育という言葉を聞いたことはありますか?
世界の教育のなかでも、あまり聞きなれない方が多いかもしれませんが、ニキーチンの積み木は今やあちこちの店頭で見かけることができます。
世間を二分したニキーチンの育児を紹介します。
ニキーチンとは?
ペレストロイカ以前のソ連、モスクワの郊外に住むボリス・P・ニキーチンは教育学科アカデミーに勤務していました。
1958年、中学の教師をしていたレーナと結婚します。
ニキーチン夫妻は、共働きをしながら7人の子どもを保育園にやらず、夫婦で従来の常識にとらわれないユニークな子育てを実践します。
7人の子どもたちを皆、才能豊かで個性的な人間に育てあげたことから、ニキーチンの育児が注目されます。
『ニキーチンの知育あそび』という本が、暮らしの手帳から出版されたのは1985年のこと。
日本でニキーチン氏の考えに共感し、ニキーチン積み木を含め、子どもとともにニキーチン流育児を実践しているところもあります。
ニキーチン流子育て
その育児法は、
零下20℃の戸外にあかちゃんを裸のまま連れ出す。
雪の上を裸足で歩かせる。 雪の上を裸足で歩かせる。
部屋の中に多くの運動器具を備える。
幼いうちから「知育あそび」と名付けたおもちゃであそばせる。
危険なことはあえて体験から学ばせる・・・。
ニキーチン夫妻の型破りともいえる独特の育児法は、当時のソ連国内でも多くの批判を浴びました。
しかし7人の子どもたちの何人もが飛び級し、優秀な成績で学校を卒業、すぐれた運動神経をもち・・・と、その後の子どもたちの姿が世間で知られるようになると、ニキーチン夫妻の教育法を学ぶために、さらに多くの人々がニキーチン家を訪れるようになりました。
その一方で、ニキーチン家の教育について「早期教育は有害であり危険だ」「ニキーチン夫妻は子どもたちを利用しているのではないか」といった批判の声もより強まり、ニキーチン教育に対する世間やマスコミに反応は二つに分かれました。
果たしてニキーチン教育は正しいのか・・・?
子育てには「正解」などないですから、その答えはでないままでしょう。
知力の伸びを助ける親の役割
子どもの知育の発達は、生まれてから3歳になるまでのあいだでその半分が終わります。
人生の最初の数年で、その人間心の基本的な性質がさだまり、全ての能力の形成がこのときからはじまります。
人生の最初の数年は、将来にとって、最も貴重な時期なのです。
この貴重な数年は、パパとママのあり方に大きく左右されます。
何を子どものためにしてやるか、どのように子どもと話をするか、何を教えるか、何をやらせ、何をやらせないか、といったことが子どもの将来に大きくかかわっていきます。
残念ながら、たいていの親御さんたちは、子どもが生まれてから数年というものは、どういう風に世話をやくか、何を食べさせるか、いつ寝かせて、いつ起こすか、何を着せたらいいか、などということばかりに気をとられ、子どもの知的発達の条件をととのえることにはほとんど無関心です。
生まれてから1年の間に、ほとんど話しかけられることもなく、言葉で意志を通じ合おうという気もおこらない環境にいると、話し始める時期は、いちじるしく遅れます。
人間の赤ん坊が動物の巣に連れ込まれ、そこで野生の動物と一緒に育ったという事例が知られています。
その子が6,7歳を超えていた場合、どんなに手を尽くしてもその子を人間に戻すことはできません。
極端な例ですが、健康に生まれついた子ならほとんどだれもが持っている素質が発揮されない結果です。
では、どのようにして子どもの才能を伸ばしたらいいのでしょう?
子どもの才能を伸ばす5つの条件
ニキーチンは創造力発達の5つの条件を見いだしました。
第一の条件は「早くから始めること」です。
子どもに話すことを教える場合、今が子どもと話し始める時期だとか、時期ではないと考える人はいません。
しかも、子どもには全く何もわかるはずのない、生まれたその日から話しかけます。
そして、5か月、10か月とたって子どもは最初の言葉を口にするようになります。
この条件は子どもの話す能力の発達よりも先んじており、話す能力の発達を刺激し、脳の言語をつかさどる部分の成熟を待っていたのです。
ほかの才能についても、できるだけ早いうちから子どものさまざまな活動を刺激するような、そして、それぞれの時点でその才能を十分発達させるような環境なり、教育システムの中に子どもをおいたらどうでしょう。
これが、才能をもっとも効果的に発達させるための第二の条件です。
ニキーチン夫妻は家庭内に子どもたちの発育をリードするような状況を作るようにしました。
さまざまな本や図、スポーツ用品(吊り輪、鉄棒、はしご)をととのえたり、工作室を作って道具や木の切れ端、針金、積み木、レンガなど。
子どもたちが自由にふるまうよう、強制はしません。
何をどの順番でやるか、どんな方法でやるか、どのぐらいの時間でやるかも子どもたちの自由に任せます。
そして、機会があればかならず子どもと一緒になって遊んだり、何かを一緒につくったりするように努めます。
その結果、子どもたちはのびのびとして、好奇心が強く、丈夫で、忍耐力もあり、判断力もしっかり、何をやらせてもうまくやってのける子に育ちました。
子どもたちが時機を逃すことなく十分に発育できる条件を少しでも作ってやろう、とおおもいになりませんか。
創造発達のための第三の重要な条件は、創造の課程というものの性格からくるもので、「最大限の力を引き出しきらねばならぬ」ということです。
この時期の子どもは、はげしく周囲の世界を知ろうとします。
しかし、子どもは大人の経験を参考にすることができません。
こんな小さな子に説明するわけにはいかないからです。
この時期の子どもは他のいかなる時期よりも創造的に活動し自分にとって全く初めての問題をたくさん解決しなければならないのです。
しかも、自分の力で、人に教わることもなしにです。
ソファの下にボールが転がりました。
10か月の子はそれをとろうと腹這いになってソファの下をのぞき込みます。
手を伸ばしても届いません。
子どもに横に回り込みます。
が、そこにはイスが立ちはだかります。
子どもはイライラし、腹を立て、すき間に差し込んだ手をグイッと引き出します。
イスが壁から離れ、すき間がたちまち広くなりボールがよく見えるようになります。
子どもはプリプリしながらイスをどんどん押してやります。
すると十分通れるほどになり、ついにボールを手に入れます。
一見単純そうな動作をしているようですが、このとき子どもの知力は、集中してはげしく働いているのです。
参照:ニキーチンの知育あそび
第四の条件子どもには「大きく自由を与えねばならない」ということです。
何をやるか、どの様にやるか等々は子どもの思い通りにやらせなければならないのです。
そうすることで、子どもの気分、興味、感情的な高まりが、信頼できる安全装置となり、かなり激しく知力を使ってもそれが子どもの害にはならないのです。
子どもの自由に任せるとはいっても、押しつけがましくない範囲の賢明なやり方で、大人が手助けしてやることまでいけないというのではありません。
これが才能を伸ばす、最後の第五の重要条件です。
子どもが自分でできることを、子どもが自分で考えられることを、子どもの代わりにやってはいけません。
残念ながら、そばから教えてしまうのが、子どもへの”手助け”でいちばんよく見うけられる形です。
これは子どもへの害にしかなりません。
- ごく幼い時から、知的発達のための”栄養”を与えることができる
- 段階を追ってむずかしくなる問題によって、子どもの発達水準の先を行く条件が、いつでもつくりだされる
- 問題をひとつずつ自力で解き、自分の力の限界まで出し尽くすことを通じて、最も効果的に知的発達がうながされる
- 知育あそびは、内容も多彩で、ほかの遊び同様、強制されたという感じはなく、のびのびした楽しい創造の雰囲気を作りだす
- 子どもが自分で考えるのを妨げず、子どもが自分でできることを代わりにしてはいけない
これは、パパ、ママも知育あそびでわが子とあそぶ中で、知らず知らずのうちに極めて大事な能力を身につけることができます。
子どもへの正確なまなざし
しかし、一つ確実に言えるのことは、ニキーチン夫妻の子どもたちへの「まなざし」は、とても優れていたということ。
夫妻は
「従来大人が考えてきた子どもの姿」
「育児書の中にある子どもたちの姿」
というフィルターを通してではなく、
「子どもたちの本来の姿」
を知ることで、私たち大人が子どもをどうサポートしていけるかを実践、紹介しています。
どんな専門家よりも、身近にいる大人をはじめ、周囲にいる大人たちこそが、その子どものことを最もよく理解できるはずなのです。
その家庭もそうであるように、ニキーチン夫妻も多くの失敗を経験しながら子どもを育ててきました。
夫妻は、そんな失敗談も含めながら自身の子育て例を通して、よりよい子育てとはなにか?を私たちに伝えています。
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まとめ
ちょっと変わった教育を実践していたニキーチン夫妻。
7人の子どもを家庭教育のなかで際立って優秀に育て上げたことが有名ですが、そこへ「ニキーチン教育法は天才児を育てる」という話題で賛否両論あったようです。
しかし、子どもに対する愛情はとても深かったように感じます。
親として子どもとどう向き合うべきなのか、今でも学ぶことがたくさんありそうですね。
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