ドイツはシュタイナー教育、フレーベル教育といった世界有数の優れた幼児教育発祥の地として知られています。
とくにフレーベルは、幼児教育の基礎を築いた人物として有名です。
ここでは、フレーベルの考える幼児教育についてご紹介します。
フレーベルの考えた理想の幼児教育とは?
フレーベルは子どもをどのようにとらえ、どんな教育を目指したのでしょうか?
その子ども感や教育観のなかには、今の時代につながる普遍的なメソッドがあるといいます。
フレーベルの教育思想
9か月で生母と死別し、多忙な牧師の父との間に気まずさを感じ、継母の目を避けて暮らすフレーベルが向き合ったのは自然でした。
自然が私たちに己と対話し考える時間を与えてくれるように、フレーベルの心もいやし、ものごとを深く考える力を与え、すべてものもが自然の摂理に従っていることを教えました。
フレーベルは、教育とは人間が自然の法則に従い、自然界の一員と自覚することが教育の目的であると言っています。
すべてのものに神から授かった(神性)があり、それが人間の本質だ、としています。
神性とは、いま風に言えば、生まれながらに持つ遺伝情報、あるいは生きる力のこと。
この神性の自覚と身体と精神との統一が、生活の上に表われることが人間の教育です。
教育というと、文字を覚えたり、知識を詰め込んだりすることと思いがちですが、自然界の一員として人間の限界を悟り、自分の生命を統一して、それを生活の中の営みのなかに表していくという根本的な作用なのです。
ですから、フレーベルはすべての子どもを(善)ととらえ、子どもは誕生のときから欲求や喜びや葛藤など内面的なものを外に表し、情報や人や状況など、外のものを内面化して自分の中で統一し、調和させる存在だとします。
そうした善を内に宿す子どもの教育は、命令や決まりの押しつけや干渉であってはいけないと考えました。
では、親や教育者が命令や干渉をしないで、どうしたら子ども自身の力で発達していけるのでしょうか。
それは あそびです。
あそぶことは子どもの心にあるものを自由に外に表したもので、幼児期も発達の最高の段階です。
「母親よ、父親よ、子どもの遊戯を養い育てよ。保護せよ。子どもが自主性に選んだ遊戯の中に将来の内面的な生活がある。」
あそぶことで人間の神性、可能性が引き出され、将来の精神生活が開かれるとするフレーベル。
命令や干渉するのではなく、子どもをあそばせることによって子どもの可能性が引き出されると考えました。
そして、1・2・3といった文字記号や言葉では数量の概念や事物の関係性は学習できないとフレーベルは言います。
「言葉で多くのことを答えることができないようにするのがいい。答えを自らもとめ、独力で発見することに比べて他人の答えは、半分も理解していない。直接答えず、子ども自身の知識から自力で見つけるための条件を子どもに与えてやるのがいい」
フレーベルの幼児教育思想は、今日の言葉や記号だけによる教育の落とし穴を示唆しているようで心痛いものがあります。
これでわかる!フレーベル3つの教育法
フレーベルの大切にした遊びには、主に3つ挙げられます。
1.自然観察
あそびとしてフレーベルが注目するものに、自然観察があります。
子どもに事物の自然な姿をよく観察させることで深い知識や洞察力を養い、自分と事物との関係を認識させ、自然界の一員としての存在に目覚めさせるのです。
それは「母と歌の愛撫の歌」の中にも表れています。(フレーベルの歌)
「坊や してみましょう
お菓子を一つ焼きましょうね
ぺたりぺたりとのばしましょう」
(お菓子作りより)
母と子が歌いながらあそんでいる様子です。
田畑が穀物を実らせ、収穫した小麦を粉屋で挽き、捏ねてパン屋で焼いてもらって食べるという営みに関連させて、部分は全体に、全体は部分にという自然の輪廻、生命合一の思想を教えます。
2.フレーベルのうたあそび
フレーベルの歌は大人が子どもとうたいながらあそぶようにつくられています。
どの曲も日常生活のなかで、子どもが経験することや、子どもに経験させたいことをテーマにしています。
また、フレーベルの歌あそびは0歳の赤ちゃんからできます。
大人のひざの上で一緒に手や足を動かすことで、運動機能や感性を育て、「予感」を目覚めさせることもできるのです。
歌詞には
「子どもはたのしいことばかり」
「いつでも思いやりに支えられ」
「うれしいね」
といった言葉が使われています。
それをくり返しうたってあそび、楽しむうちに大人は子どもの育て方が分かってきます。
また、子どもは自分がどんなに大切にされ、愛されて育てられているのか理解します。
周りのすべてのものに感謝する心が育っていくのです。
3.積み木あそび
子どもの内面は物を通して外に表れるとフレーベルは考えました。
宇宙を象徴する球体と、球からでた立方体、直方体の木製の積み木、棒きれなど。
その積み木であそぶことで数量の概念や図形認識、構成、デザインの美、机や椅子に見立てる象徴機能が養われるのです。
フレーベルの恩物とは??
恩物とは、フレーベルが開発した幼児のための教具のことです。
球体からはじまり、円柱、立方体などの立体、それを構成する面、直線、曲線、点へと形を分析しながら子どもの発達にあわせ、より細かな表現が展開できるよう考慮されたのが、フレーベルが考え出した「恩物」という歴史ある教具です。
フレーベルの想い
親として、教師として、子どもをどう導けばいいのだろうか。
ただ、児童をよく観察し、注意をすればよい。そうすれば、子ども自らあなた方にその方法を教えるであろう
大人は幼児がなすこと、見ること、発見することなどを一ヶ言い表し、命名し、それに言葉を与えるだけでいいのだ
教師の仕事とは、それぞれの樹の特性を十分に知って、自然のままに成長できるように場所を手入れし、芽を出すのを静かに待ち望むことではないか?
子どもが悪戯するとか、愚かだとかいって叱ったり、口やかましくとがめたりするけれども、叱られる子どもたちの方が賢いのではなかろうか
からだが疲れるまで飽きずに落ち着いてあそぶ子はしあわせに育つ
幼児とは
人間という大きな樹になる小さな種子のようなものではないか?
参考図書:「フレーベル全集」「フレーベル「人間教育」入門」「フレーベルの生涯と思想」「フリードリッヒ・フレーベル いま私たちが学ぶもの」
まとめ
いかがでしたか?
世界中の保育現場で、基本とされていることのなかにはフレーベルが始めたことがたくさんあります。
しかし改めてフレーベルの思想にふれてみると、子育てって、教育って、なんて自然なことなんだろうと思い知らされました。
近頃は指示待ちであそべない子どもが多く、あそんでいてもすぐ疲れてしまい集中力がありません。
あそぶ力が発達していない子どもたちに幼児期だけでなく思春期の危うさも感じます。
フレーベルの伝えたかったこと、子どもたちに託したかったもの、しっかりと受けついでいきたいと感じました。
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