隠者の夕暮
1780年ヨハン・ハインリッヒ・ペスタロッチによって書かれた作品の一つ。
ごく短い作品ながら、ペスタロッチ自身が言うように、「今後書くであろう著作を先導するもの」でした。
それ以後に展開されるペスタロッチの思想のさまざまな萌芽が、ほとんど全面的に内包されている作品と言っても過言ではありません。
「隠者の夕暮」は、旧約聖書に頻繁にみられる対句法にならって書かれた、非常に格調高い壮厳な著作です。
人間の本質とは何か?という根本的な問題の追及が、この書の中心的主題となっています。
「玉座の上にあっても、わらぶきの屋根の陰に住んでいても、同じである人間、その本質において人間とは一体何であろうか。なにゆえ賢者たちはそれが何であるかをわれわれに言ってくれないのだろうか。なにゆえ高貴な人々は、人類がなんであるかに気づかないのだろうか。」
冒頭のこの一節で提起した人間の本質についての問いに、ペスタロッチは教育学的観点から迫ろうとします。
しかも、そこには単なる教育観点だけでなく、政治的、法律的観点も含まれているのです。
初期の作品には、教育と政治との関係wで投資性が際立っています。
教育者や政治家、法律家などおよそ人間のことを配慮すべき立場の人は、人間がどんな原則にしたがって反応し、あるいは発達するのか、その発達の目的は何であり、生涯の目的はなんであるか、などを知る必要がある。
しかし、その際、哲学者たちのように抽象的、思弁的な方法によるのではなく、直接自己自身の内奥を探究する方法によるべきだ、というのがペスタロッチの立場なのです。
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