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世界の学校

公開日: : 世界の教育

     

世界の教育を見ていくと、国によって学校のあり方がさまざまであることが分かります。

教育思想家たちが作り上げた学校ではなく、国が作り上げた学校とはどのようなものがあるのでしょうか?

そして、そもそも学校とはどうして作られたのでしょうか?

ここでは学校の成り立ちと世界の学校類型3パターン、グローバル化時代の学校についてご紹介します。

 

学校の役割 どうして学校はつくられた?

 

学校の役割とはいったい何か?

それは学校を国際比較する視座となります。

 

人類の最初の学校は紀元前3500年以上も前のシュメール国家に出現した「粘土板の家」でした。

国家の官僚を養成するための学校で、生徒は粘土板をこねてノートを準備し、文字や計算の勉強を始めました。

宿題を粘土板に書いて帰宅後父親に手伝ってもらい、学校で宿題を見てもらう。

学校は文字と数字を中心とする勉強の場でした。

古代ギリシャの学校は「閑暇(ひま)の家」(スレコー)であり、現在のスクールの語源となります。

それは、暇のある自由人・貴族の子弟が通う学校という意味です。

奴隷社会の基盤として成立する勉強(教養)する場でした。

 

ローマ時代には「共同教育所」と呼ばれる学校がつくられました。

「早朝から始まること」と「多量のむち打ち」を特色とするといわれる厳しい寄宿型学校の誕生でした。

多様な体罰の手段(むち)が開発されたのもこの学校でした。

そして、「学校が教科の学習とならんで生徒の生活や規律も指導する」とするモデルの誕生でもあります。

 

ヨーロッパ大陸の学校類型

ヨーロッパ大陸の学校は、シュメールの学校のように、教科を基本とする勉強中心の学校が主です。

教科過程が教科で構成され、いわゆるクラブ活動などの特別活動はありません。

ドイツの学校に代表されるように学校では勉強し、スポーツなどのクラブ活動は帰宅後、地域のスポーツクラブなどで楽しみます。

そのため、学校はお昼過ぎには終わります(半日制)。

 

フランスの学校ではスポーツを学ぶという教育課程がないため、運動場もありません。

しつけは親の責任であり、学校は懲戒(学校規律)を厳格に行うだけです。

そのため、先生が親代わりになって生徒の面倒を見ることはありません。

そしてそれは、イギリスに誕生する教育文化からきています。

親の権利と義務が主張され、学校もそれをよく理解しています。

欧米では義務教育期間であっても、停学や退学処分が行われることがあり、日本と大きな違いを示しています。

校門を境として「親」と「学校」は責任(役割)を明確に分担しており、先生は教科を教えるだけでそれ以上のことは社会から何も要求されていません。

そのため、先生も授業が終わると校門(扉)が閉まる前に生徒と一緒に下校・帰宅します。

 

 

旧社会主義諸国の学校類型

旧社会主義諸国の学校といえば、赤いフッカチーフの生徒のいる学校が強い印象をもっています。

社会主義型学校類型の特質は

1.「思想品徳・イデオロギー教育」と「労働教育」を正課の教育課程に位置づけたこと。

2.規律の教育はピオネールや少年先鋒隊(赤いネッカチーフを首に巻く生徒)と称されるが、共産党の指導のもとにおく組織(ピオネール宮殿など)で指導する体制を開発したことにある。

学校は勉強する場とし、社会主義的規律(しつけ)も集団主義教育理論に基づいて、教育の中ではなくピオネール組織で行われました。

 

レーニンの「勉強せよ。勉強せよ。そして勉強せよ」そして、毛沢東の「好好学習、天天向上(よく勉強し、日々向上するように」というスローガンは社会主義学校の本質が「勉強中心」にあることを見事に表しています。

 

しかし、ソ連の終焉。東欧諸国の崩壊。社会主義経済の市場化。グローバル化はますます社会主義体制の変容を迫っています。

今や純粋モデルはキューバの学校ぐらいとなっています。

ロシアやポーランドは脱社会主義国家として新たな学校類型を模索しています。

そして今やポーランドはOECDのPISA型学力を目指す優等生となっています。

 

英米諸国の学校類型

イギリスは大陸諸国の学校と趣の異なった学校風景を築いてきました。

その学校文化は大英帝国時代の植民地支配と英連邦国家によって世界に伝幡し、さらにアメリカで成熟・進化した学校文化がさらにアジアなど多くの国に伝幡(教育文化借用)していきました。

イギリスの学校には「顔」があるといわれてきましたが、それは教育課程などすべてを各学校が決めることができる制度によるものでした。

宗教教育一般を除いて、全て各学校の裁量でしたが、それは国の教育課程基準がなかったためでした。

教科書も自由発行・自由採択であり、加えてクロス・カリキュラムと知られる「トピック学習」が普及していました。

必修科目という概念もなかったので、生徒は選択制の中で自由に科目を選択することができました。

現在はイギリスにもナショナル・カリキュラムがあり、一定の教科を教えることが求められています。

 

アメリカでも州政府が教育課程の基準を定めていますが、必修科目は少なく、選択制が基準となっています。

アメリカでは選択制をさらに実質化させてきた制度として「単位制」があります。

数学も自動運転コースもいずれも1単位という制度が開発され、高校卒業要件も34単位以上取得という制度で生徒は自分の興味関心あるいは将来の進路を考慮して、自由に科目を選択することができます。

学校は生徒が将来社会にでて必要とする知識や技能を科目・プログラムとして提供し、社会に出る準備を支援してきたといえます。

 

そして、選択科目が導入されたばかりでなく、教科以外の教育活動が正規の教育課程に組み込まれてきたという事実があります。

例えばイギリスでは古くから人格教育の観念が提唱され、ジェントルマン教育の思想もあり、学校教育にスポーツ教育が導入されました。

心も体も健康で教養のある優れた人格を育てるのに重要であるとして、課外活動が積極的に導入されました。

このようにしてスポーツ活動や文化活動などの「クラブ活動」が誕生しました。

ラグビーもこうした学校文化の中で誕生したというエピソードは有名です。

アメリカの学校でもクラブ活動が活発で、正課の授業の延長のかたちでのクラブ・部活として展開されています。

 

英米諸国の学校ではまた、生徒指導体制が確立され整備されています。

学校規律を維持し、生徒の発達を支援することは学校や教師の重要な使命であるといいます。

教師は「親代わり」論に基づいて、生徒を指導援助し、ときには懲戒(体罰を含む)を行ってきました。

選択教科、クラブ活動、特別活動など面白い活動が用意され、教師や専門家が親身になって世話をしてくれる学校こそがこの英米型であり、卒業後も懐かしく思い出されるという意味で「思い出の残る学校」であるといえます。

日本の学校も多くの思い出の残る学校類型です。

 

 

グローバル化時代の学校

経済のグローバル化は社会経済や政治のみならず、教育にも大きな影響を及ぼしています。

その代表的なインパクトが、雇用と労働市場に現れています。

グローバル化する産業構造の中での労働市場が求める人材要請に的確に対応できない学校教育・大学教育の現実があります。

雇用のミスマッチ、有期雇用、アルバイト、フリーター、失業といった大卒者が直面する問題は深刻であり、失われた20~30年問題といわれています。

そして、暗記中心、偏差値と受験学力重視により主体性、創造力や独創性を欠如する生徒、いじめで閉塞状況になる学校と生徒、入学後は勉強しない・勉強を求めない日本の大学教育、海外に留学しない日本人学生、英語ができない日本人など、グローバル化する時代の変化についていけない日本の学校の現実があります。

今やグローバル人材の育成が重要となっています。

 

そして、グローバル化はある意味世界標準化すること、国際標準化すること、世界の市場で競うこと、世界の市場を意識して働くことを意味します。

その端的な例がOECDのPISA学力調査です。

PISAが世界の教育にインパクトを及ぼしたのは、読解力、科学的リテラシー、数学的リテラシー、問題解決能力といった、知識の量ではなく、知識や技能を活用する能力を測定する学力調査でした。

つまり、グローバル化し、知識基盤境における21世紀型学力を提案し、生徒がそうした能力をどこまで獲得しているかを問うものでした。

 

多くの国ではPISAを分析し、そうした新しい能力、学力をつけるべきカリキュラム開発を行っています。

これが教育課程の標準化・国際標準化であるといえます。

 

しかし、グローバル化の怖いところは、世界が均等化してくることにあります。

均等化すればするほど世界の学校は同じ顔になり、魅力を失い、その力を失います。

将来に備えるためにグローバル化時代にあっていかに「多様な学校観・教育観・学力観」を残すかにかかっています。

ブータンやサモアなどの異質な学校文化は21世紀後半のために保存すべき絶滅危惧種であるといっても過言ではありません。

グローバル化は世界の学校に対して、近代化とは違った厳しいインパクトを与えています。

世界はグローバル人材の要請にこたえながら「明日の学校」を考えなくてはなりません。

 

 

 

 

 

 

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