イエナプラン教育とはどんな教育?イエナプランの特徴 教育問題が改善されたオランダ

イエナプラン教育

画一的な教育から個別教育へと教育の方向性を180度変えて広まったイエナプラン教育は、「落ちこぼれ」させないことが目的であったとされています。

1970年代のオランダで急速に広まったといわれる「イエナプラン教育」についてご紹介します。

 

イエナプランとは?教育の特徴と活動内容

イエナプラン教育とは、欧州で人気のあるオルタナティブ教育の一つです。現在オランダには、220校以上のイエナプラン小学校があります。

オランダにはモンテッソーリ、ダルトン、フレネ、シュタイナーと様々なオルタナティブ教育のスクールがある中で、イエナプランの学校が最大数を占めています。

オランダ式のイエナプランは世界的にも主流とされています。

イエナプラン創始者 ペーター・ペーターセンとはどのような人物だった?

 

【イエナプランの大きな特徴】

イエナプランの最大の特徴は、異なる年齢の子どもたちが、ともに一つのクラスをつくって学ぶということ

主に4歳〜12歳の初等教育段階や就学前の子どもたちを対象としています。

世の中にはさまざまな立場や性格の人々がいるということを学校に反映し、子ども同士の助け合い、教え合いによって、社会性の発達を促そうとしています。

生徒は年次をまたがり在籍し、さながら兄弟のように上が下の面倒を見ながら学習を進めます。

生徒たちは4〜6歳、6〜9歳、9〜12歳と、年齢に応じて3つのステージに分けられ、一つのクラスになります。

3学年ずつがまとめられているので、それぞれのステージで年少→年中→年長と経験していきます。

 

【グループの編成】

イエナプランでは、三学年混合のグループを「根幹グループ(ファミリーグループ)」と呼んで、学校での様々な活動の基本的な単位としています。

根幹グループは幼児グループ(4~6歳)」・「低学年グループ(6~9歳)」・「高学年グループ(9~12歳)」に分かれます。

子どもは、同じグループリーダー(担任教員)の同じ教室に3年間留まることになります。

一年が経過すると、三年生(9歳児)が高学年グループに移動し、幼児グループから新一年生が入ってきます。

つまり、グループ全体の1/3の子どもたちが交代し、残りの2/3の子どもたちは、そのままグループに留まることになります。

根幹グループの中で、子どもたちはさらに5~6人ずつの「テーブグループ」に分かれ、自立学習、共同学習が行われます。

この「テーブルグループ」も必ず3学年にわたる子どもたちを組み合わせて作ります。

つまり、6人グループでは2人が1年生(年少)、2人が2年生(年中)、2人が3年生(年長)という形になります。

年少・年中・年長という3つの立場を順に体験することで、教えたり、助けたり、現実の人間関係をより自然と身につけることができます。

 

【4つの活動】

イエナプラン校の時間割は、対話・学習・あそび・催しの4つの活動をリズミカルに取り入れることで成り立っています。

1:サークル対話

子どもたちがグループリーダーとともに輪をつくって話し合う「サークル対話」。

リーダーが10人ほどの子どもたちを集めて何かを教えるときにも使われる形式です。

みんなで輪になって行う対話の時間「サークル対話」では、従来教員から生徒たちへの一方向に限られていたコミュニケーションが、多方向に広がり、先生も含め、教室の中での人間関係が豊かな広がりをもちます。

手が届くほどの身近な距離で話をする機会をできるだけ多く設けることによって子どもたち同士、また、子どもとグループリーダーとの間のお互いに相手を人として尊重しあう関係が重視されています。

2.仕事(学習)

「個別指導」は、画一教育で行われているような「できない子ども」を別教室や教室の隅に一か所に集めて指導する、というようなものではなく、普通の授業の中で、できる子に対しても、できない子に対しても、それぞれの進度に応じて同様に行われます。

そのほかに「自立学習」と「共同学習」の場を確保し、授業の中でこの3つの要素が組み合わされ、取り組まれています。

子どもたちは与えられた活動を、可能な限り自発的、計画的に選んで取り組みます。

「自立学習」の時間、子どもたちは自分の進度に応じてどんどん挑戦的に先に進んでいくことができます。

こうした自立学習は、先生の目の届くところで行われているため、うまくいかないときやどうすればよいか行き詰ってしまったときに、すぐに先生に質問したり、説明を求めることができます。

「共同学習」は、ほかの子どもたちとの相互作用を通じ、ほかの子どもとの関係の築き方や役割分担の仕方を学びます。

グループはあくまでも、お互いがそれぞれの意見を率直に話し合える場、共通の目的に向かってそれそれの役割を明らかにしながらともに協力していく場、と考えられます。

グループでの学習は、個々の子どもの自主的な判断や参加によって進められます。

 

3.あそび

子どもたちに学んだ知識やスキルを実際に使ってみる場を与え、学びを意味のあるものにします。

創始者のペーターセンは、遊びは子どもにとって感情表現の一つの方法であり、子どもは遊びを通じて成長し情緒的な発達を遂げる、といっています。

表現学習はもちろんのこと、算数や文法の学習の中にも、遊びやゲーム感覚のの学習がさまざまに取り入れられています。

勝負を決めるゲームだけでなく、ともに笑いころげ、ともにこころを開放する遊びの時間を織り込むことで、学習に集中していた子どもたちの緊張は解かれ、学びへの意識が高まります。

そして子どもも教員も率直に意見や感情を分かち合う関係が生まれます。

 

4.催し

イエナプラン教育の「催し」には、セントニコラウスやクリスマス、イースターといった年中行事だけではなく、クラスの中で祝う子どもの誕生日、週末の学芸会など、教室や全校規模で互いの喜怒哀楽を共有するための場を与え、学校を基盤とした温かい共同体づくりに役立っています。

催しは、必ずしもお祝いや学芸会などの楽しいことばかりではなく、悲しいことや事件が起こったときにはその出来事について考えるための集まりが持たれることもあります。

「催し」の主要な目的は、生と学びの共同体である学校の子どもたちが、人としての感情を共有する機会を増やすことにあります。

 

*イエナプラン教育では「対話」「遊び」「仕事」「催し」がリズミカルに循環して行われるため、科目ごとの時間割を設けていません。
時間割は学習活動の形態によって作られるため、学校ごとに環境や条件が異なるため、すべてのイエナプラン校が同じ時間割を使ってはいないのです。

 

教育の中核 ワールドオリエンテーションとは?

一つの科目に限定されずに、科目をまたいで行われるのが、イエナプラン教育の「ワールドオリエンテーション」。

社会と理科といった教科別の学習をつなぎ、それに基づいて『学ぶことを学ぶ』ために設けられた総合的な学習の時間です。

そのため、イエナプラン教育では意図的に科目ということをあまり意識しないように努めます。

ワールドオリエンテーションのカリキュラムでは文化、社会領域から自然領域にわたる7つの「経験領域」を定めています。

「経験領域」は

・作ること、使うこと
・技術
・コミュニケーション
・共に生きる
・環境と地形
・めぐる一年
・私の人生
と、子どもにとって日常の生活のなかにきっかけを見つけることのできる、子ども自身の経験につながる領域です。

このようにワールドオリエンテーションの目的は、知識を広く身につけることではなく、物事をどう見るか、どこに耳を傾けるか、どのようにして問いを立てていくか、立てた問いについてどうやって答えを出すか、などを学ぶことにあります。

この学びを通じて、子どもたちは一人で学ぶこと、さらには他の子ども対とともに学ぶことを学びます。

 

「ワールドオリエンテーション」という言葉は、「世界を知る、世界に向けて方向づける」という意味があります。

科目の枠に縛られずに、子どもの経験から出発し、それを国語や算数、表現活動にまで広げて指導する、というのは教員にとっては大変難しいことです。

イエナプラン教育における科学の学びとは、大人たちがすでに持っている知識を子どもたちに伝達することではりません。

知識ではなく、「科学する心」「発見し観察し探求する心」を育てるという信念が礎としてあります。

 

発達障がい児も共に学ぶ

個々の子どもの障がいの程度によって、可能な限り健常児と交流させ、その中で指導するというインクルージョンの考え方は先進諸国の中で広く進められている政策です。

能力も関心も様々に異なる子どもたちが、共有された場でお互いに接することは、障がい児だけを集めた集団では決して現実し得ない、健常児もともによりよい発達を遂げることを目指すという、教育学的で積極的な意味があります。

オランダでは、障がいのある特定の子どもに対し、全国共通の基準によって、支援の種類を判定し、そのための予算を出して補助金額を決め、それを子ども(または保護者)が自由に選んだ学校へ持っていく、という『リュックサック政策』というものがあります。

(*特殊教育を受ける子どもの保護者から、長い間、子どもに学校を選ぶ複数の選択肢がないのは不平等の証であるという批判の声が上がっていました。)

健常児と障がい児が一緒に授業を受けるというものは、画一的な一斉教育が徐々に姿を消し、子どもたちが一人ひとり、それぞれ自分に合った指導を受け、それぞれのテンポで発達している、という社会的な認識がかなり形成さてれいるからでしょう。

 

イエナプラン教育20の原則

イエナプラン校の数が増えていくほど、『イエナプラン教育とは何か』という共通認識を明らかにする必要が高まってきました。

この教育の原則的な共通の姿勢をより明確にしておくことが求められるようになり、1990年現在広く知られている『イエナプラン教育の20の原則』ができました。

この教育が人と社会のあるべき姿をどう考えているかを明示するものであり、また、そこから発展して「学校とはどういう場であるべきか」という学校のあり方についての基本的な考えを明らかにするものです。

ここではその20の原則をご紹介します。

A.人について

1. 各人はユニークである。つまりたった一つの存在であり、すべての子どもとすべての大人はそれぞれ、かけがえのない価値を持っている。

2. 各人はその人がその人らしく発達する権利を持っている。その人らしい発達とは、次のようなものによって特徴づけられる。すなわち、独立性、自分で判断する意識をもつこと、創造性、社会的正義へ向かう姿勢。この権利は人種、国籍、性別、性的傾向、社会環境、宗教、信条または障害の有無によって左右されるものでは一切ない。

3. 各人はその人がそのひとらしく発達するために次のようなものと独自の関係を持っている。すなわち、ほかの人々、自然や文化について感得できる現実、および感覚によっては経験できない現実と。

4. 各人は常にひとりの人格を持った人間として認められ、可能な限りそのように待遇され、話しかけられるべきである。

5. 各人は文化の担い手、また、文化の改革者として認められ、可能な限りそのように待遇され、話しかけられるべきである。

B.共同社会について

6. 人は各人のかけがえのない価値を尊重する共同社会を目指して働くべきである。

7. 人は、各人のアイデンティティを発達させるための場と、刺激が与えられる共同社会を目指して働くべきである。

8. 人は、お互いの間の相互や変化を、公平と平和と建設性に基づいて受け入れる共同社会を目指して働くべきである。

9. 人は、地球と世界空間を尊重しかつ注意深く守る共同社会を目指して働くべきである。

10. 人は、自然資源と文化資源とを、将来の世代のために責任をもって用いる共同社会を目指して働くべきである。

C.学校について

11. 学校は、関係者の、自立的で共同的な組織である。学校は社会によって影響を受けると同時に、それ自体が社会に対して影響を与えるものである。

12. 学校において大人たちは、先に示した人と共同社会についての原則を、自らの教育学的な出発点として、仕事を行う。

13. 学校で教えられる教育内容は、子どもたちの生の世界と経験世界から、そして、人と共同社会の発達にとって重要な手段であるとみなされる、われわれの社会の中の文化資源とから引き出される。

14. 学校では、教育は、教育学的な道具を用いて教育学的な状況に応じて実施される。

15. 学校では、教育は、対話、遊び、仕事(学習)、催しという基本活動がリズミカルに循環する教育形態で行われる。

16. 学校では、子どもがお互いに学び合い助け合うという目的のもと、年齢や発達のレベルに違いのある子どもたちのグループが慎重に考えられたうえで作られる。

17. 学校では、自立的な遊びや学習が、指示されたり指導されたりする学習によって補足されながら、両社が交互に行われる。指示的、指導的な教育は、特に、レベルの向上を目的としている。これらすべての学習において、子ども自身のイニシアチブが重要な役割を果たす。

18. 学校では、基本的な経験、発見、探求とともに、ワールドオリエンテーションが中心的な場を得る。

19. 学校では、子どもの行動や成績についての評価は、可能な限り、その子どもの発達の経緯から、また、その子どもよの話し合いを通じて行われる。

20.学校では、変更や改善は、不動のプロセスとみなされる。このプロセスは、行動と思考との首尾一貫した交換作用を通じて遂行される。

 

まとめ

いかがでしたか。

イエナプランはドイツのペーター・ペーターセンが提唱した教育法ですが、時代に埋もれていた教育であったことがわかります。

そんな教育法ですが、偶然にもオランダで広まるというところに、教育に国境はないのだと思いました。

日本では難しそうな、、、でも魅力的な教育法ですが、オランダという国だったからこそ発展した教育でもありますね。

そんな日本でも、創めて2019年度4月にイエナプランに基づいた学校「大日向小・中学校」が長野県に開校することになりました。

日本という土地でどのような成果がみられるか、楽しみですね。

それと同時に、日本でももっと多くのオルタナティブ教育が知られてもいいように思いました。

日本ではオルタナティブ教育という言葉すら主流ではないように思います。(私が意識していなかっただけかもしれませんが・・・(-_-;))

国の義務教育とは異なるオルタナティブスクールで自由な教育を、不登校となって学校へ行けない子どもが学校に行けるようになってほしいと常々思います。

教育というものは時代とともに、社会とともに変化していくものであるべきだと思いました。

 

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